企業における人手不足の問題とその原因は?解決策を解説

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2023年01月30日 配信
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企業における人手不足の問題とその原因は?解決策を解説

企業における人手不足の問題とその原因は?解決策を解説
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人手不足は、企業にとって解決の難しい問題です。人材難は業種や業態、業界の区別なく、あらゆる企業で慢性化しています。なぜ深刻な人手不足に陥っているのか。人手不足によって生じる問題や、大きな打撃を受けている業界はどこか。これらについて解説するとともに、人材難の解決方法をご紹介します。

企業における人手不足の現状

企業における人手不足の問題とその原因は?解決策を解説

企業における人手不足とは、業務遂行に必要十分な人材が集まらない状態を指します。こうした状態は、業務に支障をきたすなどの理由から部内の人間関係に悪影響を及ぼすこともあるため、経営上の重要な課題のひとつにとらえられています。とりわけ中小企業では人的リソースの減少が事業継続に直結するため、重大な課題になっています。

中小企業庁が毎年発表する統計資料「中小企業白書」によれば、2009年を境に全業種(製造業、建設業、卸売業、小売業、サービス業)で、人材の過不足を示したデータがマイナス域に転じています。背景には2008年のリーマンショックによって、働き手の意識に変化が生じたことなどがあります。

企業は2010年以降、人手不足解消のために求人募集を強化しました。なかでも中小企業は、人材増員に可能な限り取り組む動きを見せました。これらのデータから読み取れるのは、小さな規模の組織における人手不足の深刻さでもあります。

こうした流れは、2015年前後に緩やかになり、日本全体の雇用者数は若干の改善が見られています。しかし大企業を除くと、横ばいに近いながらも減少傾向にあります。つまり、すべての企業における人手不足問題は、いまだ解決に至っていないということだと言えます。

企業が人材難に陥った原因とは?統計から見る人手不足問題

企業における人手不足の問題とその原因は?解決策を解説

なぜ多くの企業で人手不足が叫ばれるようになったのでしょうか。
企業の人材難を引き起こした原因はいくつかありますが、大きな理由は「少子高齢化」と、「働き方の変化」、「雇用システムの変化」が影響していると考えられています。

原因1:少子高齢化の進行

内閣府が出した「令和3年版高齢社会白書」によると、日本の総人口1億2,571万人のうち65歳以上人口は3,619万人。高齢化率で示すと28.8%まで上昇していることがわかります。15歳から49歳までの女性の年齢別出生率を合計した「合計特殊出生率」の低迷もあり、15歳未満の人口割合は12.0%と、少子高齢化年々拍車がかかっています(令和2年10月1日時点)。

これらのデータが示すのは、日本は就労可能な人口の減少が続いているため、企業が慢性的な人手不足に陥っているということです。

とは言え、総務省統計局の「労働白書令和3年版」によれば、2020年から世界を襲った新型コロナウイルスの影響もあって、完全失業率は2020年10月に3.1%にまで上昇しています。

新型コロナ禍以前の完全失業率は、2019年まで2.4%でした。平均就業者数も増加傾向にありました。これらのデータが物語っているのは、人手不足は少子高齢化以外にもさまざまな要因が複雑に絡み合っているということでもあります。

原因2:従業員の少子高齢化に伴う働き方への意識の変化

戦後に目覚ましい高度経済成長を遂げた、日本社会の雇用モデルである終身雇用制度においては、新卒一括採用から定年退職まで同じ組織で働くのが一般的でした。しかし、年号が昭和から平成となった頃に膨らんだバブル経済が弾け飛ぶと、その後の長きにわたる平成不況のなかで働き手にも、雇用側にも変化が生まれました。

それを顕著にさせたのが、2008年のリーマン・ショックでした。アメリカ投資銀行大手のリーマン・ブラザーズが史上最大規模の負債を抱えて倒産したことが引き金となって、世界的な金融・経済危機に陥り、雇用側の企業と従業員側の働き手の間には溝が生じました。

「ブラック企業」、「パワハラ」、「過労死」などの言葉が社会に認知されたのも、この時期でした。働き手の意識が変化し、それまでの昭和の時代なら「働くうえでは当たり前」が通用しない社会へ動いていきました。

こうした潮流と、若い世代の労働人口の減少が重なったことにより、企業では新卒採用時に従業員を十分に集められない事態が発生するようになりました。新卒採用で人手不足に陥った企業では、労働環境が悪化するケースが多いために早期退職も発生しやすくなります。しかし、それを補填する代替人材を雇用する難しさもあって、人手不足がさらに深刻化する負のスパイラルが発生している。これが人手不足状態にある企業の根底にある問題です。

原因3:社会情勢の影響

厚生労働省の資料によれば、新型コロナウイルスが流行して以降の有効求人倍率は減少傾向にあります。有効求人倍率とは、企業からの求人数をハローワークに登録している求職者数で割った値で、有効求人倍率が1を上回るときは企業側が人手不足のために売り手(求職者)市場、1以下のときは買い手(企業)市場になるため求職者にとっては就職難ということになります。

この値がコロナ禍によって減少している側面だけを切り取れば、求職者ひとりに対する求人数は減っているため、雇用側の企業にとっては人材採用がしやすい状況のように映ります。

しかし、実情は異なっています。企業側の欲する人材と求職者側の求める仕事が必ずしも一致するわけではありません。求職者は自分の求める就業条件やスキルに沿った仕事を選ぶ傾向が強いため、統計上は人手不足が解消する傾向に見えても、実際は限られた求職者を一部の企業間で奪い合う構図になっているわけです。そのため中小企業やニッチなスキルが要求される業界では、求人を出しても応募者が集まらず、人材不足をいつまでも解消できないため問題が深刻化しているのが現状です。

また、コロナ禍では従来の仕組みで企業経営を続けるのが難しく、ニューノーマルへ対応するための新たなオペレーションが要求されることも珍しくありません。これによって人手不足に陥ることも起こり得ます。
例えば、対面式ビジネスを展開している企業であれば、検温・消毒などの作業に人手を割く場合、以前であれば充足していた人手が不足する事態が生じる可能性があります。 2021年に帝国データバンクが発表した動向調査結果によると、「正社員が不足している企業」の割合は37.2%に達します。コロナ禍においては、人材の確保はさらに難しいミッションになっています。

特に人手不足が著しい業種・業界は?

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人手不足が大きな問題となっている業種や業界は、「建設業界」「運送業界」「介護・福祉業界」「サービス業・飲食業」「医療業界」などがあります。

建設業界

建設業界は、工事現場で働く職人、管理監督者の両方で慢性的な人材不足が生じています。
原因は、昭和の時代から言われてきた「3K(きつい・危険・汚い)」のマイナスイメージをいまだに払拭しきれていないことにあります。若い世代から敬遠されがちな事に加え、これまで現場を支えてきた人材が高齢のために引退となることも重なり、人材の世代交代がスムーズに進んでいない状況です。現場を支える人材の高齢化は続いているため、新たな担い手の確保は最重要なテーマになっています。

運送業界

運送業界においても、建設業界と同じく就業環境の厳しさゆえの人材確保の難しさがあります。加えて、EC(Electronic Commerce)の拡大によって、運送業の需要は増加し、これまでよりも多くの人材を必要としていることも人手不足を強めている一因になっています。
2020年の新型コロナウイルス流行以降、オンライン上での購買需要は日増しに高まっており、現状のままだと市場拡大に対して運送業界の人材総数が追いつかないことも想定されています。

介護・福祉業界

介護・福祉業界は、少子高齢化の影響を直接的に受けています。高齢化による利用者の増加に対し、専門的な知識やスキルを要する人材が圧倒的に不足しています。また、建設業界や運送業界と同じく、肉体を使う仕事へのハードルの高さ、業界全体の給与水準がほかの仕事に比べて低いことなども人手不足を助長する原因となっています。

サービス業・飲食業

観光業を始めとする各サービス業や飲食業界においては、従来からの慢性的な人手不足はもとより、新型コロナウイルスの流行によって業界全体が打撃を受けたことで、人材難だけでなく経営難といった問題も発生しています。

医療業界

医療業界は、新型コロナウイルスの流行による影響を最も受けた業界と言えます。
医療逼迫・医療崩壊といった事態も懸念される中、サービス需要が急拡大したことに対して医師や看護師をはじめとする人材の供給が追いかず、慢性的な人手不足に陥っています。

人手不足で生じる企業経営の懸念事項

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企業が人手不足に陥ったとき、具体的にはどのような問題が懸念されるのでしょうか。

事業縮小

まず想定できるのが、事業縮小を余儀なくされることです。

例えば営業担当に欠員が出れば、対応できる顧客の母数は減少します。もちろん、個々の業務処理能力には差があるため、欠員が出ても顧客数を維持できる可能性はありますし、逆に大規模な人員投下に比例して事業が拡大するわけでもありません。ただし、事業維持の観点で言えば、一般的には欠員が出るダメージは大いにあります。

加えて、新規事業の創出や社内教育の強化などは、人的リソースに余裕がない状態では、そこに従業員を割くこと難しくなります。会社として取り組むべき課題を後回しにしなければならず、そのツケはいずれ払うことになりかねません。他社との競争力を失う危険性があることも懸念事項になっています。

企業と従業員それぞれのニーズのミスマッチ

人員が不足しているからと、人材を無理に雇用することで生じる「企業と従業員それぞれのニーズのミスマッチ」も、人手不足の状態では起こり得る問題です。
企業側には、雇ってみたものの思ったようなスキルを持った人材を採用できなかったことによって不満が生まれ、従業員側は仕事へのモチベーションや業務品質の低下などの問題が発生します。こうした問題の源流は人手不足によるニーズのミスマッチにあるため、問題の解決に至らないケースも散見されます。
このため慢性的な人手不足は企業経営を脅かす可能性があります。

人手不足の解決策は?

企業における人手不足の問題とその原因は?解決策を解説

少子高齢化や時流による仕事への価値観の変化、さらには新型コロナウイルスの流行による景気全体の停滞感など、人手不足問題はさまざまな原因から引き起こされています。では、解決策としてどのようなアクションを起こすべきなのでしょうか。

まず必要なのは、現状の業務プロセスを検証し、非効率なオペレーションを改善していく行動です。
具体的にはITソリューションの導入や、ペーパーレス化を推進し、生産性の向上を試みることです。手作業による非効率な業務を削減していくことが、結果的に職場環境の改善にもつながります。離職率の低下や就業環境の改善といった効果も見込める可能性があります。

職場環境を改善する

個別の対応策としては、職場環境の改善が人手不足の抑止に効果的と考えられます。 新たな人材の獲得と離職の防止を目指すにあたっては、従業員側の視点に立って「どのような職場であれば長く活躍したいと感じるか」を考えることがポイントです。

賃金や福利厚生などの従業員の生活につながる待遇の見直しはもちろん、オフィス環境を魅力的なものに整えることも有効とされています。このほか、従業員同士が盛んにコミュニケーションを取れるような「風通しの良さ」を意識した組織マネジメントを行うことが効果的であると考えられています。

幅広い人材採用・育成を推進する

人材採用・育成に関して既存の体制を見直し、新たに幅広い層がより活躍できる体制づくりを試みることも有効であると言われています。
従来であれば採用のメインターゲットではなかったシニア層の雇用促進や、管理職への女性の積極的な登用がその一環になります。ダイバーシティの推進が重視される現代の時流に応じた柔軟な人事を行うことが求められます。

同時に、人材教育にも力を入れ、業務のマルチタスク化や組織全体のレベルアップを目指すことも重要な課題になっています。
人材育成を強化することで人手不足にも対応できるスキルを組織全体が持つ。結果として人材難への対応力の向上が期待できます。

ITを活用して業務の効率化を行う

既存の業務オペレーションを見直し、さらなる効率化を図るアプローチは、人手不足へ対応するうえで避けることのできない課題です。
限られた人員が、最高のパフォーマンスを発揮できる。これがよい業績につながり、そのことが社内環境や待遇面のさらなる改善に結びつく。こうしたサイクルをつくり出すことで、組織全体に前向きな取組みができる力が生まれることが期待できます。

業務効率化を目指すうえで有用なのが、ITツールの積極的な活用です。人手不足の原因には、業務フローの中に自動化やシステム化に対応できていない要素があるケースが少なくありません。課題を具体的に解決する最適なツールを適宜導入し、組織としての対応力強化を目指すことが効果的です。

BPOサービスの導入

業務改善に取り組んでも、日々発生する定型的な業務や、売上や利益に直接つながりにくいバックオフィス系の業務を減らすことは難しいものです。そこで活用したいのがBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)サービスです。

BPOとは、さまざまな業務に精通したプロフェッショナルが、タスク単位ではなく、業務の運用そのものを代行するサービスです。社員による指揮命令が必要な人材派遣とは異なり、社内リソースをほとんど要さずに活用できるメリットがあります。

パソナ日本総務部ではパナソニックグループで培った多彩な業務ノウハウを活かし、通常は総務部門などが担っているノンコア業務(企業利益に直結しないが、不可欠な定型業務)を幅広くサポートしています。こうしたサービスを活用すれば、企業内の限られた人材をほかの業務にまわせるようになります。

まとめ

今回はあらゆる企業が直面している人手不足の問題を解説しました。公表されている統計データからも、少子高齢化による労働人口の減少や人材の新規雇用・離職防止の難しさが理解できます。

働き方改革の波にはじまり、コロナ禍の世界的な混乱も人材難の流れに拍車をかけているようです。人手不足に端を発するさまざまな課題に対して、企業が今こそ、これまでの業務体制を見直して改善に着手する。変化を恐れずに勇気を持って前に進むことが、すさまじいスピードで移っていく時流への対応力を高めることにつながるのではないでしょうか。

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