働き方改革で残業時間がどのように上限規制されたのか?背景や残業時間の削減方法を紹介

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2022年03月24日 配信
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働き方改革で残業時間がどのように上限規制されたのか?背景や残業時間の削減方法を紹介

働き方改革で残業時間がどのように上限規制されたのか?背景や残業時間の削減方法を紹介
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2020年4月の労働基準法改正によって、中小企業にも残業規制の上限が設けられることになりました。働き方改革の一環として行われたこの法改正によって、企業やそこで働く従業員にはどのような影響があるのでしょうか。 今回は、残業時間がどのように上限規制されたのかを解説するとともに、改正に至った背景や残業時間の削減方法について紹介します。

働き方改革とは?

厚生労働省によると、働き方改革は下記のように定義されています。
“「働き方改革」は、働く方々が、個々の事情に応じた多様で柔軟な働き方を、自分で「選択」できるようにするための改革です。”
具体的には、労働者一人ひとりが自ら働き方を選択することで、より良い将来の展望を持てるようになることを目指す取組みのことです。人口一億人以上の日本において、「一億総活躍社会」を目指した取り組みであるともいえるでしょう。

働き方改革の2つのポイントとして、「労働時間法制の見直し」と「雇用形態に関わらない公正な待遇の確保」が挙げられています。

働き方改革「時間外労働の上限規制」

働き方改革で残業時間がどのように上限規制されたのか?背景や残業時間の削減方法を紹介

ここでは、法改正による時間外労働の上限規制の目的や改正前・改正後の比較などについて見てみましょう。

残業時間の上限規制の目的

従来の「働きすぎる社会」を見直し、個々の労働者がワークライフバランスを重視した柔軟な働き方を選択できるようにするために、残業時間の上限規制を設ける法改正が行われました。
残業時間の上限規制は、約70年前に労働基準法が施行されて以来、初めてのことです。

改正前と改正後の比較

それでは、上限規制の改正前と改正後ではどのような違いがあるのでしょうか。具体的な違いを比較してみましょう。

改正前

従来から法定労働時間(1日8時間・1週40時間が上限)を超えて残業を行う場合は、いわゆる36協定と呼ばれる労働者と企業間による労使協定の締結が必要とされていました。また、残業時間における上限の基準として、厚生労働大臣の告示により月45時間・年360時間と定められていました。しかし、現実には上限基準を超えていても罰則が与えられるわけではなく、特別条項を適用していれば年最大6カ月までは労働時間を無制限に延長できるという実態がありました。

改正後

法改正後も、残業は原則として月45時間、年間360時間以内という基準自体は変わりませんが、特別な事情がない限りこの時間数を超えることは違法となり罰則が科されることになりました。

仮に繁忙期などの臨時的で特別な事情があり労使が合意していても、残業は月100時間未満(複数月にまたがる場合は月平均80時間以内)である必要があり、かつ年間720時間を超える残業はさせられなくなりました。この上限を超過すると罰則の対象となります。また、1カ月あたり45時間を超過できるのは、1年間に6カ月までと定められています。

この基準を超過した場合、30万円以下の罰金または6カ月以下の懲役が科される可能性があります。

そもそも残業(時間外労働)とは?

法改正で残業時間に上限が設けられたことは前述のとおりですが、そもそも「残業」とはどのような状況を指すのでしょうか。ここでは、残業(時間外労働)について詳しく解説します。

法定内残業

残業は、法定内残業と法定外残業の2種類にわかれます。
「労働者の労働時間は1日8時間かつ1週間あたり40時間」という法定労働時間が労働基準法によって規定されており、1日あたりの労働時間が8時間に満たない場合に8時間に到達するまで働くと、その差分が「法定内残業」として扱われます。

例えば、9時から17時(休憩1時間含む)を定時として働いている従業員は1日の労働時間が7時間ですが、この従業員が18時まで働くと、法定内残業は1時間となります。

法定外残業

時間外労働の上限規制に関わってくるのは、法定外残業です。
法定外残業とは、前述の法定労働時間である「1日8時間・週40時間」を超えて働いた分の時間を指しています。
例えば、9時から21時(休憩1時間含む)まで労働した場合、労働時間は11時間であり、法定労働時間が8時間なので、法定外残業は3時間になります。

残業時間の規制によって予想される問題

働き方改革で残業時間がどのように上限規制されたのか?背景や残業時間の削減方法を紹介

残業時間が規制されることによって、さまざまな問題が起こると予想されています。ここでは、どのような問題が起こり得るのかについて解説します。

残業代の削減で給料が少なくなる

残業時間が規制されるということは、これまで残業を当たり前のものとして働いていた従業員にとっては労働時間が短くなり、残業代が削減されるということでもあります。

残業代があることを前提にしていた従業員は、給料が少なくなることによって生活が厳しくなる場合や、中長期的な生活設計に影響が出るなどの問題が起こる可能性も考えられるでしょう。

家で仕事を行うサービス残業が増える

残業時間の規制により、企業としては法令にのっとって基準時間内に業務を終了させなくてはなりません。しかし、どうしても仕事が終わらないなどの事情があると、従業員自らの意思で自宅に仕事を持ち帰るなどしてサービス残業を行う可能性があります。
サービス残業が増えると「ワークライフバランスを重視する」という働き方改革の考え方に反することになり、この点も問題であるといえます。

業務量が不均等になる

残業時間の規制によりすべての従業員が所定の時間で業務を終了することになると、スキルや習熟度の差によって時間内に業務が終える人と完了できない人の差が出る可能性があります。よりスピーディーに業務を終えた人に、完了できなかった人の分の仕事が回ってくるなど、結果として従業員間の業務量が不均等になって不満が出るおそれがあります。

残業時間の規制に対応していくには

それでは、残業時間の規制に対応していくにはどのような対策が必要になるのでしょうか。企業ができる具体的な対策をご紹介します。

管理監督者が定時で帰る

残業時間の規制が始まっても従業員がこれまでの習慣を変えられずに残業が常態化しているようであれば、管理監督者が積極的に定時で帰宅し、組織全体の意識改革をはかりましょう。
社内に「上司が残業していると帰りにくい」という雰囲気がなくなることで、従業員も自分の仕事を終えればスムーズに帰宅できるようになると考えられます。

業務の効率化を進め業務量の配分を見直す

従来の業務フローを改めて見直し、効率化できる部分がないかを見直してみましょう。現在は業務効率化のためのクラウドベースのシステムやツールがさまざまなベンダーから多数開発されており、以前よりもIT導入に必要な労力やコストが少なくて済む傾向にあります。
あわせて、業務量の配分が適切かを見直すことも大切です。所定労働時間内に仕事を終えられないほど、従業員1人あたりの負担が重くなっているようなら、人員の追加や業務手順の見直しなどを行って負担の分散や軽減をはかる必要があります。

アウトソーシングやBPOを導入する

日常的に発生する定型的な業務などはアウトソーシングやBPOなどの外部委託で効率化し、従業員は所定労働時間中に本来行うべき業務に集中できる環境を整えることも対策の一つです。
従来からデータ入力や請求・支払いに関する経理業務、システムの運用・保守などでアウトソーシングが活用されていますが、それにとどまらず近年ではアウトソーシングの対応範囲は多岐に広がっています。会社運営に必要な業務だが、必ずしも自社の従業員が行わなくても良い業務であれば、外部企業の力を借りてアウトソーシング化し、自社リソースをより高度な業務に確保するという選択肢もあります。

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まとめ

働き方改革をきっかけに改正された労働基準法では、残業時間の上限が明確に定められており、超過すると企業に罰則が科される可能性もあります。
企業全体が改正後の残業規制について理解し、法令に適応するために業務の見直しや企業風土の改善などの取り組みを行うことが大切です。

社内の残業対策だけでは業務をこなしきれない場合は、一部の業務についてアウトソーシング化を検討するのも手段のひとつです。
パソナ日本総務部では総務部で発生するさまざまな業務を代行する、総務BPO・総務アウトソーシングサービスを提供していますので、働き方改革への対応にお悩みの際はぜひお気軽にご相談ください。

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