社内用の防災備蓄用食品はどうそろえる?選び方の基準と管理のポイント

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2019年03月05日 配信
2024年04月16日 更新

社内用の防災備蓄用食品はどうそろえる?選び方の基準と管理のポイント

社内用の防災備蓄用食品はどうそろえる?選び方の基準と管理のポイント
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地震などの災害が頻発する日本では、企業においても日ごろからの防災対策が必要です。被災時に従業員を守るため、十分な量の防災備蓄品を準備する必要があります。今回は防災備蓄品の中で『食品』にフォーカスを当て、備蓄用食品を選ぶ際の基準と、主な食品別の特徴、適切な管理方法の3点について、そのポイントをご紹介します。

会社の防災備蓄は義務?

会社が防災対策として備蓄品をストックしておくことを「義務」として定めた法律はありません。しかし、都道府県や市によっては条例の中で企業における防災備蓄品の準備を促している場合があります。

例えば、東京都の「東京都帰宅困難者対策条例」では、各企業で食料品や飲料水、毛布、災害用トイレなどを備蓄して、災害発生時に従業員が帰宅できず企業内に数日間留まるような場合に備えることを求めています。この条例は自分自身の身の安全を守る「自助」と、消防や警察、自衛隊などの公的機関による救助・支援である「公助」を両立させるために、2012年3月に制定、2013年4月より施行されました。
この条例が制定される契機となったのは2011年の東日本大震災の発生です。都心でも公共交通機関などが大きな被害を受け、オフィスにいた多くの人が帰宅困難に陥りました。このことから、従業員の一斉帰宅が救急・救助活動の妨げになることを防ぎ、施設に一時的に滞在できるように備えておくという観点で定められました。

条文では、「一、従業者(アルバイト・パートを含む)の一斉帰宅の抑制と従業者の三日分の食糧等の備蓄についての努力義務を課します。」と記されています。
記述にあるように努力義務のため、もし企業が備蓄を行わない場合でも刑罰や過料といった法的なペナルティはありません。しかし、災害から従業員を守り、災害後に迅速に事業を再開させることは企業の社会的役割として大変重要です。そのため、企業において防災備蓄のストックに努めることが浸透してきています。

ほかにも、大阪府の「事業所における一斉帰宅の抑制対策ガイドライン」、熊本県の「平成28年熊本地震を踏まえた防災行動計画」など、各地の自治体ごとに条例が制定されるようになり、その数は増加傾向にあるようです。

会社の非常食の備蓄量

会社の防災備蓄の量の目安は、「各従業員の3日分」です。前述した各都道府県の条例のうちの多くが、最低限の備蓄日数として定めています。
基本の備蓄品としては、保存水や非常食のほかにも、乾電池や蓄電池、懐中電灯、衛生用品、救急医薬品、簡易トイレ、携帯ラジオ、ヘルメットなどが挙げられます。

従業員が15人の場合に必要な備蓄食糧の数を例に挙げると、飲料水は1日3リットル×15人×3日間=135リットルとなり、備蓄食は1日3食×15人×3日間=135食分です。
最低3日分の備えが必要な理由として、大災害発生時の人命救助のリミットが72時間(3日間)であることが挙げられます。特に都市部で大地震が起きた際には、高層ビルの倒壊や広範囲での火災が予想され、警察・消防・自衛隊の救出・救助活動が最優先となります。これらの活動を妨げないよう、災害発生後は安全な建物内に数日間留まり移動を抑制するためにも備蓄が必要なのです。
また余震や事故による二次災害から身の安全を守るために、むやみな行動を抑制するためでもあります。これらの理由から、オフィスに最低3日間は滞在できるような備えが必要とされています。

大人1人が過ごすのに必要な防災備蓄や初期対応用の防災備蓄については、こちらの記事をご確認ください。

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備蓄用食品の選び方と7つの代表的な食品

備蓄用食品を選ぶ際には、賞味期限に十分な余裕があるかを確認しましょう。備蓄用食品は3年や5年、10年など長期間保存できるものが中心です。しかし、社内の人員構成に応じて定期的な買い替えを検討している場合は、長期保存タイプでなくとも十分だという考え方もあります。社内での買い替え計画に合わせた、賞味期限の備蓄用食品を選びましょう。
また備蓄用食品は保存や配布、携帯のしやすさも重要なポイントです。避難時にかさばらないように、1人分の食品をまとめた携帯用防災セットがあると非常に便利です。
備蓄用食品は、調理が必要なもの・不要なものの両方をそろえておくことがおすすめです。災害発生の直後は、電気や水道が断絶する可能性を踏まえ、すぐに食べることのできる食品が必要です。一方で、長期にわたる避難生活を想定し、水やお湯などで簡単に調理ができる食品も備蓄しておくことも重要です。
これらの選び方を踏まえて、ここからは代表的な76つの備蓄用食品と、その特徴をご紹介します。

1.保存水

保存水とは、長期保存用に製造された飲料水のことです。飲料水があれば、水分補給はもちろん、アルファ化米やインスタント麺といった非常食の調理にも使えます。
賞味期限は5年以上であることが多く、長いものでは10年程度保存できるものもあります。
一般的なミネラルウォーターは不純物のろ過がされていても、殺菌処理までは行われていないものが大半であるため、2年程度しか保存ができません。一方、保存水は高温殺菌処理を2度行い、無菌のクリーンルームで容器に密封することで、5年以上という長期間の保存を可能にしています。
処理の方法は違いますが、味は普通のミネラルウォーターと同じです。保存水を選ぶときは、日本に住む多くの人誰もが飲み慣れている軟水を選ぶようにしましょう。
ペットボトルに入った保存水は、500ミリリットルよりも2リットルサイズの方がコストパフォーマンスの良い傾向にあります。しかし、非常時にコップが使えない状況で直接口をつける可能性を考えると、大きく重い2リットルサイズでは飲みづらいでしょう。
細菌の繁殖を抑えるためや、配布しやすいということからも、保存水は500ミリリットルタイプの物も準備することがおすすめです。

2.アルファ化米

アルファ化米とは、一度炊き上げた後に乾燥させたお米のことです。賞味期限は長いもので5年程度です。
お米は炊飯によってデンプンがアルファ化し、美味しく、栄養が吸収されやすい状態になります。保存食のアルファ化米はこの状態で急速乾燥させているため、劣化しにくく、お湯や水を加えるだけですぐに食べることができるのです。
アルファ化米を使った備蓄用食品は白飯だけではなく、混ぜご飯やドライカレーなど種類も豊富です。避難訓練などであらかじめ従業員に試食してもらい、人気の高い味のものを備蓄しておくと安心です。
商品によってはパッケージの中にスプーンも入っており、器に移さずそのまま食べられるため食器を洗う手間も必要ありません。非常時において貴重な生活用水も使わずに済みます。

3.缶詰パン・袋詰めパン

備蓄用のパンは、缶やレトルト食品の袋などに密封されています。味はプレーンのほか、チョコ、フルーツ風味などの種類があり、賞味期限は長いもので5年程度です。ただし商品によっては、賞味期限が6カ月程度と短いものもあり注意が必要です。
缶詰タイプは、中のパンがつぶれにくいことがメリットですが、袋詰めタイプと比べるとかさばりやすいのが難点です。一方、袋詰めタイプは缶詰に比べてつぶれやすいものの、かさばらず軽量で、ゴミも減らすことができます。
備蓄用のパンを選ぶ際には、その食感にも注目しましょう。食感が硬めのパンは腹持ちが良く、少ない量でも満足感を得ることができます。柔らかいパンはかむ力が弱い人でも食べやすいため、高齢の従業員が多い場合や、小さなお子様のいる家族の避難も想定される場合に向いています。

4.ビスケット・クッキー

ビスケットやクッキーは水分量が少ないため、長期保存がしやすく備蓄用食品の定番とされています。 水やお湯を必要とせず、手を汚さずにすぐに食べられる点もメリットです。
形状は缶詰タイプのものが多いですが、携帯しやすいように平らな箱のコンパクトなタイプも普及しています。味はクリームやチョコチップ入りなど甘いものや、塩気のあるクラッカータイプもあり種類が豊富です。
スーパーのお菓子売り場で見かけるようなブランドのビスケットやクッキーが缶詰にパッケージされ、長期保存が可能なタイプの商品もあります。なじみのある味を口にすると非常時の心の安心にもつながるので、多くの人が食べたことのあるような商品を備えておくのもおすすめです。

またビスケットやクッキーは腹持ちが良く、1袋でも高カロリーを摂取できる保存食です。また商品によっては、気温の大きな変化にも対応できるものもあり、高温になりがちな自動車内で保管することも可能です。

5.フリーズドライ

フリーズドライは、食品を急速冷却で冷やした後、真空状態で乾燥させたものです。お湯を注ぐだけで食べることのできる味噌汁やスープ、麺類のように、温かい汁物は非常時に冷えた体を中から温めるだけでなく、心を和ませる効果もあるとされています。
ほかにも、フリーズドライにはフルーツや野菜を乾燥させたものもあります。ビタミンやミネラルが豊富なドライフルーツは、非常時に不足しがちな栄養素の補給に最適です。ドライフルーツには食物繊維が多く、ストレスからの便秘対策にも適しています。
ただし、ドライフルーツの賞味期限は長いものでも1~2年程度です。ほかの賞味期限が長い備蓄用食品と混在しないように注意して保管しましょう。

6.アレルギー・ハラール対応食品

避難者の中には、アレルギーがあり一般的な食品を食べることができない方もいます。食品によってはアナフィラキシーショックなどの、死につながる危険な症状を引き起こす可能性もあるため、従業員にアレルギーがないかのアンケートを取り、アレルギーに対応可能な備蓄用食品を準備しましょう。
イスラム教徒の従業員や顧客が避難する可能性がある場合は、ハラール対応食品を準備します。ハラール対応食品とは、イスラム法上で食べることのできる基準を満たした食品のことです。戒律で禁止されている豚肉などの食材を使わず、イスラムの教えに従った処理方法で製造されています。
これらの基準を満たしている食品には、ハラール認証マークが付与されています。

7.レトルト食品

手軽に食べられることから普段の食事においても人気の高いレトルト食品も、非常食としておすすめです。スープやおかゆ、カレー、惣菜など、ラインラインアップナップも豊富で、さまざまな種類のレトルト食品を準備しておくことで飽きずに食べられます。
お米やお肉、野菜といった多様な食材のレトルト食品を準備しておくことは、栄養面の観点からも頼もしい心強いといえるでしょう。
賞味期限は、スーパーで手にできる手に入るような通常のレトルト食品でも、3〜7年と長期間に設定されていることがほとんどです。

最近は電子レンジやお湯などで温めずに、常温のままパッケージを開けてすぐに食べられるタイプのものも登場しています。スーパーなどで市販されている多くの人にとってなじ馴染みのある食品は、非常時の安心につなげることもできるでしょう。

備蓄用食品の管理方法

備蓄用食品を適切に管理するために、以下の3つのポイントを押さえましょう。

1.必要な量を把握する

自治体などによる食料支援の開始や、ライフラインが普及するまでの間、避難者全員に物資が問題なく行き渡るように、備蓄用食品は最低でも3日分を準備しましょう。
主食は1人あたり1日3食分、3日間で9食分の準備が必要です。

もし従業員が帰宅可能な場合には、道中の安全を確保するため、最低1日分の水と食料を配布します。また従業員に配布する備蓄用食品とは別に、長期にわたって会社に滞在する必要のある、災害対策本部の分を別途準備しておきましょう。

なお、備蓄品を配布する対象となる従業員は、正社員だけではありません。アルバイトやパート、派遣社員など、雇用形態を問わずオフィスで働くすべての人を指します。また災害発生時に顧客や取引先などの来客があった場合、数日間は来客も従業員と共にオフィス内に留まる可能性があります。
備蓄用食品の数には余裕を持って備えておくことをおすすめします。

2.十分な種類を準備しているか

備蓄用食品は量だけでなく、十分な種類をそろえておくことも大切です。 火や水を使わなくてもすぐに食べられるものや、少ないエネルギーで誰もが簡単に調理できることも大切なポイントです。
災害時には大きなストレスがかかる中、食事に飽きることがないよう、食べやすさやおいしさも考慮しましょう。日ごろから食べ慣れているものや好みの味のものであれば、なお安心です。ドライフルーツや羊羹などの甘みを感じる食品には心を落ち着かせる効果もあるとされているため、主食とは別に準備しておくと良いでしょう。

栄養が偏らないためにも、十分な種類をそろえておくことが大切です。アレルギーやハラール対応食品も含め、できるだけ栄養バランスが整うようにしましょう。

3.処分・管理方法は決めているか

備蓄用食品は災害時に取り出しやすいように、避難場所の近くなど被害の可能性が少ない場所に保管しましょう。保管するキャビネットやロッカーには転倒や浸水への対策も行い、災害時にもスムーズに取り出せるようにしておく必要があります。
空きスペースがあるからといって、ビルの機械室への保管や、スプリンクラー設備の防水ヘッドをふさぐような設置を行うと、消防法違反となります。そのため保管の際は、ほかの安全対策を妨げないような注意が必要です。
また災害時には、ビルのエレベーターが利用不可となり、階段や通路がふさがれる可能性もあります。ビル内でフロアが複数に分かれている場合は、保管場所も同様に分けることも検討しましょう。
加えて、従業員の目にとまる場所に保管しておくことも大切です。
災害発生時に備蓄保管の担当者がその場所にいるとは限りません。従業員一人ひとりに備蓄用食品の格納場所を前もって周知することで、いざという時に担当者が不在であってもそれぞれが行動できるようにしておくようにしましょう。

備蓄用食品の賞味期限切れによる廃棄を出さないためには、「ローリングストック法」が有効です。ローリングストック法は、災害の発生にかかわらず賞味期限の古いものから定期的に消費する、従業員に配布するなどを行ったうえで不足分を買い足す方法です。この方法であれば、いつ災害が発生しても賞味期限の有効な備蓄用食品を備えることができます。

備蓄用食品の賞味期限が切れる前に、会社の災害訓練時に試食するのもおすすめです。従業員自身が実際に限られた燃料で調理をし、普段食べ慣れない備蓄用食品を試食しておくことで、一人ひとりの防災意識の向上にもつながるでしょう。
また実際に使ってみることで、食品選びや備蓄方法において見直すべき点が発見できるかもしれません。企業の防災対策をブラッシュアップするという効果も期待できるでしょう。

備蓄品の維持管理がうまくいかず、賞味期限が迫った備蓄用食品が数多く発生してしまったというケースもあるでしょう。大量の食品廃棄が出そうな場合は、フードバンクを活用するのもおすすめです。
これは、商品パッケージのミスや賞味期限が近いなど「食べられるが一般には流通させられない食品」を、福祉施設や団体に提供する取組みです。フードバンクに持ち込むことで、食品ロスと廃棄コストを抑えられます。

備蓄用食品の購入や、定期的な買い替え作業には労力がかかります。この作業に割く人的・時間的コストをかけるのが難しい場合は、専門業者の『備蓄用食品管理サービス』を利用するのもおすすめです。この管理サービスを利用すれば、賞味期限切れの前に専門業者から通知があり、場合によっては不要になった備蓄用食品を引き取ってもらうことができます。社内で在庫確認や買い替えなど、手間な管理作業を行う必要がなく、常に適切な備蓄を保つことができます。

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非常食を入れ替えるタイミングにつきましては、以下の記事をご覧ください。
非常食を入れ替えるタイミングとは?入れ替えの方法や賞味期限切れの対処法までご紹介!

災害に備えて備蓄用食品をそろえておきましょう

災害対策の備蓄用食品は、最低3日分の量が必要です。ライフラインの復旧が長引いたり、従業員の帰宅が困難な状況に備えたりする場合は、さらに余裕を持って量と種類をそろえる必要があります。
また、備蓄用食品は準備するだけではなく、管理方法や購入先の選定も重要です。自社で管理するならばローリングストック法などを実践し、管理が難しい場合は専門業者の管理サービスを利用するようにしましょう。

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